みなさんが、もし恵まれない人生だったとしたら、こんな想像をしたことはありませんか?

「いまの親は本当の親じゃない。自分は実は、お金持ちの子供かも知れない。」

昔、こんな漫画やドラマが数々ありました。

・孤児だったが、実は自分は赤ちゃんの頃に誘拐された挙句に捨てられた、お金持ち家の子供だった。

・貧乏家庭で育ったが、実は父親(母親)は、勘当されていた超お金持ちの子息(令嬢)で、勘当を解いたおじい様が迎えにきた。

・子供の無い親戚の、莫大な遺産を相続することになった。

・愛人と本妻が同時期に赤ちゃんを産み、愛人が自分の子と本妻の子をすり替えた。

少女マンガですと、

・王家の血を引いていた。

…なんて、ストーリーもありました。


ちょっと昔、『牡丹と薔薇(ぼたんとばら)』という昼ドラが流行っていました。

数年前ですと、『八日目の蝉(ようかめのせみ)』なんてありました。

どちらも、愛人が本妻の子を誘拐して、自分の子として育てる話です。

そして最近では、福山雅治さん主演で、カンヌ映画祭・コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した

『そして父になる』

これこそ正しく、赤ちゃん取り違えのストーリーなのです。

◆◆◆あらすじ◆◆◆

主人公の野々宮(福山雅治)は、屈折のないエリート人生を送ってきた人物。

ある日、産院から連絡があり、6年間育てた息子が、病院で取り違えられた他人の子供だと判明。

血の繋がった我が子は、田舎で電気屋を営む、がさつな両親に育てられていました。

双方の家庭は、実の子供と交換することを決意し、最初は週末だけ、実の両親の元で過ごす…という形を取ります。

ところがどうしても、育った環境の違いすぎる実の我が子と馴染めません。

次第に野々宮は、“血のつながり”なのか、“慈しんできた6年間”なのかを悩み苦しみ始めます。



◆◆◆

そして、いま連日ニュースで取り上げられている、60年前に起きた

赤ちゃん取り違え事件

私は最初、

なぜ60年も経っているのに、ここまで大騒ぎになっているんだろう。

と、思っていました。

過去にも、赤ちゃん取り違えの話題はありましたが、それと比べると、今回は異常にクローズアップされている気がしたのです。

そして、ニュースの詳細を知り、

「それなら、訴えたくもなるよな~。」

と、同感しました。


この“取り違え”事件が起きたのは、東京都墨田区の『賛育会病院』

今回当事者となった2人の出生は、昭和28年3月30日午後7時だそうです。


《格差のある人生》

【自分】(仮に“貧”さんと付けておきます。)

・四人兄弟の四男(うち、三男は幼い頃に死亡)

・父親が2歳(ニュースによっては3歳)の時に死去。以降、母子家庭で生活保護を受けて生活。

・自分を含めて3人兄弟。6畳のアパートで家族4人で生活。

家電がほとんどなく、あるのはラジオ程度。

・トイレ、台所は共同。

・家計を助けるため、中学卒業後に町工場に就職。働きながら定時制高校へ通う。

・職を転々とした。

・現在はトラック運転手。

・(血のつながらない)兄の介護をしている。


【取り違えられた相手(本来、自分が与えられるはずだった環境)】
(仮に“豊”さんと付けておきます。)

・四人兄弟の長男。

・社長子息。

・小学生の頃から家庭教師がつけられていて、大学まで進学。
 (弟たちも大学や大学院まで進学。その後、大手企業の就職。)

・一部上場企業に就職後、現在は不動産会社の社長。


そして、なぜ今さら、この取り違えが発覚したかと言いますと…。


豊さん一族では、母親が亡くなった後、病気の父親を在宅介護すると豊さんが言い出したため、弟たちは3000万円相当の母親所有の土地などを兄・豊さんに譲ることにしたそうです。

ところがいざとなると、豊さんは父親を高齢者施設に入れようとしたので、それに反発した弟たちは分担して介護することにしました。

ところが豊さんが協力的でないため、「態度が冷たいのは、血がつながっていないからだ!」と、これまでずっと抱いてきた疑念を強めたそうです。

その後、父親の死亡で、遺言により兄が父親の住んでいた家も相続することになり、弟たちは、兄が血縁でないことを確認する訴訟を起こしたというのです。

そしてDNA鑑定の結果、豊さんに血縁関係が無いことが判明。

しかし、「実の両親が分からない状態では、豊さんの「自分は一体、何者なのか…。」という、アイデンティティが損なわれる。

育ての両親も亡くなっているため、『養子縁組』という措置も行なえない。

また、既に遺産相続した家・土地などを取得している豊さんにとっては、彼の娘さんたちの生活にも影響を及ぼすという配慮もあり、結果的に弟さんたちは敗訴。

そこには、「どうせ実の両親は見つからないだろう…。」という、裁判所の手抜きも入っていたようです。

ところが弟さんたち。

とことん調査を続け、とうとう産院から情報を引き出すことに成功。

そして、貧さんに辿り着き、そこでDNA鑑定を実施。

鑑定結果で、99.999999%の確率で血縁関係が認められたのです。

ちなみに貧さん。

2013年6月に、本来の生家である弟たちと同じ戸籍に、長男として変更されているそうです。


今後は、貧さん、豊さん、弟3人を含めた5人の間で、遺産相続のやり直しが展開されるとのこと。

本当の兄弟である、貧さんと3人の弟さんたちは、現在、仲良く親交を深めているそうです。


福山雅治さんの『そして父になる』と違い、実際に起きたこの事件では、

血のつながりを再認識

させられた結果となったようです。

「実は貧乏家庭の息子だった。」

と知った、豊さんの心中も、察して余りあると思います。

いずれにせよ、丸く納まる話ではなさそうですね。